投稿者:池畠 悠 所属塾:みやうち塾 閲覧数:378
投稿日時:2020年4月27日1:46
最終閲覧日時:2025年11月25日8:40
読解力とは何なのか。
これまで、文章が読めないという状況に関して、3つの段階で説明してきました。
まず第一段階は語彙力。
これは、言葉を知らないから読めない、という状況です。
例えば、次の文章を読んでみてください。
行為主体を正統化の審級ヒエラルキーとして見るだけでなく、行為主体間の正統性をめぐる相互依存/客観的共謀という視点が必要である。
この文章、読めたでしょうか?
この文章を読むためには、
行為主体、審級ヒエラルキー、正統性、相互依存、客観的共謀
これらの言葉がわかっていなければなりません。
こういった現代文特有の言葉を増やしていくのが、語彙力。
しかし、それだけでは不十分。
次は、この例文を。
毎日勉強しながら、お互いを評価していくことを繰り返してこそ、知識の定着は可能であり、そうして身につけた知識こそが、真の学びということができるのである。
今度の文章は読めた人も多いと思いますが、難しく感じた人は、「文構造」がわかっていないことが原因です。
この文章の主部、述部をまとめると、
お互いを評価することを繰り返して身につけた知識が、真の学びなのだ。
ということになります。
長い文になったときに、一文を端的にまとめる力が、読解の第二段階において重要な力です。
しかし、これでもまだ不十分。
文を読むにはもう一つ重要な力があると伝えてきました。
それは、文と文のつながりを理解する力。
語彙が完璧で、文構造が全て分かり、一文の意味がわかったとしても、
文と文、そして文が作る段落のつながりがわからなければ、文章を読むことはできません。
そして、この文と文のつながりに関しては、次の4パターンしかない、ということは伝えてきました。
順接・並立
逆接・対比
因果関係
相同表現
文のつながりは、このどれかに分類される、ということはもう理解してますね。
しかし、この文のつながりには、まだ奥深いところがあります。
それは、文脈を読み取る力。
というのも、文と文のつながりが4つに分類できるということがわかったとしても、
じゃあ、どうすれば分類できるのか
がわからなければ意味がありません。
そして、その文と文のつながりを理解する力こそ、文脈=コンテクストを理解する力です。
例えば、次の詩を読んでみてください。
ふくらはぎ
俺がおととい死んだので
友だちが黒い服を着こんで集まってきた
驚いたことにおいおい泣いているあいつは
生前俺が電話にも出なかった男
まっ白なベンツに乗ってやってきた
俺はおとつい死んだのに
世界は滅びる気配もない
坊主の袈裟はきらきらと冬の陽に輝いて
隣家の小五は俺のパソコンをいたずらしてる
おや線香ってこんなにいい匂いだったのか
俺はおとつい死んだから
もう今日に何の意味もない
おかげで意味じゃないものがよく分る
もっとしつこく触っておけばよかったなあ
あのひとのふくらはぎに
これは、谷川俊太郎の「ふくらはぎ」です。
この文章、1文1文はよく分かる。
でも、どうしてふくらはぎに触りたかったの?
と聞かれても、なんでだか分からないと思います。
どうしてふくらはぎに触りたかったのか。
谷川俊太郎は何が言いたかったのか。
これを知る力がコンテクストを読む力。
当時の時代背景。
谷川俊太郎の作風・考え方
そういったものを教養として身につけていないと理解できません。
そして、読解力で最も身につけにくい力こそ、このコンテクストを読む力。
一朝一夕に見につかないからこそ、この力をつけてほしいと思っています。