数学はヒラメキ力じゃない。数学が苦手な人に贈る勉強法
投稿者:なかの塾 塾長 所属塾:なかの塾 閲覧数:646
投稿日時:2019年12月28日17:59
最終閲覧日時:2025年11月26日13:27
なかの塾
巷には「公式は覚えるものじゃない!」や「グラフを用いて視覚的に!」など、かっこいいアドバイスがありますが(私も普段申しますが)、それは解き方の一部であって実は本質をついたものではありません。
数学が苦手になる原因は以下の2つです。
① パターン学習が不徹底である。
② 計算を軽減させる意識ができていない。
①についてですが高校生でしたら、例えば「青チャート」が受験における教科書のような存在ですが、この例題をすべてこなして初めてパターン学習を終えたことになります。しかし、平均してみると県内進学校の「青チャート」完成率は5割を切るとみています。こうして武器なしに受験生となり、全国の受験生と対峙することになります。最終的に第一志望に近い大学に合格される方もある程度の人数ありますが、それは並々ならぬ受験生自身の純粋さ、葛藤、努力によって、つじつまが合っている状況が続いています。学べる場が高校にしかなく高校が使命感をもって受験指導を行わなければならない時代ではもはやないのに、旧来の形式が相対的に若干劣化した形で今なお残っているため、逆に生徒の伸びをおさえる不思議な現象が起こっています。
高校側が生徒の大半の時間や学習内容を管理する権限を持っているうえに、面談は生徒にとって大切であればあるときほど威圧的で、しかも進路が制限されることもあることをしばしば聞きます。ですから、教える側からみると決して美談ばかりではないような気がしています。もちろん諸事情ある中で立場が変われば見え方も異なりますし、全部があてはまる訳ではないとも思います。ただし、進学が生徒自身の将来と直結する以上、それを優先させる環境は常に確保させたいと思っています。「青チャート」の完成が土台となり東北大学までならねらうことが可能だと言われていますが、このようなパターン学習の慢性的な不徹底が致命的な伸び悩みを起こす根本的な原因です。
②についてですが、県内各高校では「日々の演習」というプリントが毎日課題とされていますが、論理を重視した模範解答的な解答過程にこだわりすぎるあまり、数式のとらえ方が一辺倒になっています。例えば、数学の計算は+、-、×、÷の4つの組み合わせですが、特に÷を極めることで計算を劇的に減らすことができます。つまり、÷の計算面での重要性は「約分」できることです。数々ある式変形の中で、計算を根本的に軽減できるものは唯一「約分」のみです。冗談のようですが、こういった何でもないところの抜けの積み重ねが、センター試験や2次試験での差を生んでいます。
これら①,②によって、岩手県全体の学力は大きく伸び悩んでいます。特に①が致命的です。強い資格取得意識とリンクした英語と違い、数学は独学するというイメージは通常持たれていませんし、むしろ数学の独学は変な目でみられるくらいです。しかし、主要教科が欠けてしまってはもはや受験は戦えませんし、他教科でも同じような準備不足があると感じています。そういった経緯から、特に現高校2年生からは、塾的には臨戦態勢に入りたいと考えています。各自の目標に合わせ、内容を決定して進めていきます。他学年の皆さんについても、今学校で練習している内容の意味を考えてみましょう。同じ練習であっても得られるものは変わってきますし、それにプラスすることができればより力をつけることができます。
数学が苦手な人がよく口にするのは、「私にはヒラメキがない」です。数学が苦手な人は、突然解法がパッと頭にひらめくような、何か天性の才能のようなものが数学には必要だと思っています。「数学が論理の源ですべてを解決する根源になる」専門的にはそうかもしれませんが、受験的にも実生活的にも必要ありません。割り算を極めれば簿記などを筆頭にして、仕事でも生活でも困ることはありません。専門の方であればあるほど、自分の得意分野を神聖化したいと考えると思います。しかし、他教科もまんべんなくこなし、知識が増えることで理解が深まる面白さを知ったり、様々な中学・高校・大学入試問題を確認したり、模試や某私立高校の入試問題を作題したりして、その結果感じたのは、数学にはヒラメキなどないということです。強いて言えば、ヒラメキとは「有と有の結合による理解が深まる瞬間的な現象」であって、無からは何も生まれません。
そして、入試問題を研究する中で気付いたのは、むしろ、有名中学や高校、そして都市圏の学習カリキュラム、それを支える環境すべてが地方と差をつけるために巧妙に構築されている事実でした。例えば、平均点というトリックをつかって地方には平易な全国学力テストに関心を向けさせておき、他方、その裏で首都圏では粛々と作業を行っています。秋田が学力一位と注目されている裏で、都市圏は学力的な優位をしっかりと確保しているのです。(直観的に私が感じていたことが「学力の経済学」という本に書かれています。)また、地方の大学受験の正味の準備期間は半年強ですが、都市圏では2年くらいです。勝てる勝負も勝てない原因はそういったことに尽きるのです。
しかも、もはや推薦入試が入試の大半ではないかというくらい高校ではそれがもてはやされ、大学側もその状況に乗りかかり、生徒を集めるだけ集め、いざ入試では就職面接ばりの圧迫面接を行い選別していることも散見されます。そして、その判断基準が明確でありません。(アドミッションポリシーはあるようですが圧迫面接とどう関連しているか不明です。実際、面接入試の中に感じるは学問的な見地からの選抜ではなく実社会の洗礼を垣間見ます。)
気軽に推薦入試を提案してくる担任に限って第二の矢は用意されていません。推薦入試の合格率は半分程度ですし、見方によると推薦入試は超ハイリスク・ハイリターンな側面を持つ入試となっています。(ただし、小論文は論理で勝負ができるため、小論文の配点が高い場合は勝負する価値は十分あります。)華やかさばかりが目立ちますが、3月にある後期試験まで戦う覚悟がなければ推薦入試は受けてはなりません。
個別指導塾であったため、すべての生徒の喜びも悲しみも共に経験してきているため、時折話が熱くなり内容がズレてしまいますが、21回連続21回目の受験と関わる冬を迎え、より生徒さん方のための塾になりたいと決意しつつ、状況に合わせ硬軟使い分けて対応していきたいと思っています。まとめますと、どこまで行っても受験は経験値の差なのです。「数学=ヒラメキ」と考えている限り、数学に対する苦手意識はなくなりません。
受験数学に必要なのは、むしろ暗記です。もちろん、一部の国私立超難関校の入試問題には才能が必要な問題も一部含まれていることがありますが、それでもごく一部の話ですし、その問題はその高校の意地と宣伝であって合否とは全く関係のないところにあります。問題を作問する側にとっても、才能が必要なレベルの問題というのは毎回毎回つくるのは大変です。入試問題をつくる方にとっては、どうしても過去の模範的な内容を参考にしたくなるものです。
では、解法パターン習得では、どのように数学を「暗記」すればいいのでしょうか。数学を暗記すると言えば、公式を暗記して終わりという人も見かけますが、そこで勉強を終わりにしてはいけません。公式を暗記するのは必要ですが、数学に必要なのは公式暗記よりもむしろ「解法パターンの習得」です。標準問題の解法パターンを徹底的に暗記し、標準問題の類題を同じ解法で、自分で解けるようにすることが必要です。それを繰り返していくと、解法パターンのストック量が増えていき、問題を読んだ瞬間に「ああ、この問題はあのパターンで解けるな」というようになります。
「基本的な問題は解けるけれど、応用問題になるとちょっと・・・」という相談もよく受けますが、一見すると難しそうに見える応用問題であっても、標準的な問題の解法パターンを2つか3つ組み合わせるだけで解けるものが大半なのです。「応用問題が解けない」という人は、標準的な解法パターンがしっかりと身についていないか、どのパターンを組み合せると解けるかが分かっていないかのどちらかです。前者でしたら、解法パターンをとにかく暗記・実践を繰り返していくと良いです。後者でしたら、解法パターンがしっかりと身についているという前提であれば、応用問題を数多く解いていきながら、どのパターンとどのパターンの組み合わせで解けるかを意識してひも解いていくことで、パターンの組み合わせ問題に慣れることができます。
解法パターンの定着数学の解法パターンを習得しても、それが自分の頭の中にしっかりと定着しないと数学の苦手は克服できません。パターンを定着させるためには、繰り返し類題を解いていくことが大切です。問題を見た瞬間に、「ああ、これはあのパターンだな」と思えるくらいになるまでには、問題量を定期的に、たくさんこなしていくことが必要です。
標準的な問題集を2〜3回繰り返すことで解法パターンを定着させることが可能です。1回問題集を解いただけでは、解法パターンの習得はできても定着は難しいです。定着できていないものは、いつか必ず忘れる時がやってきます。そうすると、「あれ、この問題解いたことあるんだけど、何だっけな〜」となってしまいます。
数学は解法パターンの暗記によって克服できるとは言え、それを支えるためには最低限の確かな計算力が必要です。計算力がない人が、解法パターンだけ暗記していても一向に数学ができるようにはなりません。トップ校を狙えるような生徒さんでも、解法パターンの暗記くらいできるような優れた暗記力を持った生徒さんでも数学が苦手な子のほとんどが、計算力がないのです。高校入試数学であれば、正負の数、一次・二次・連立方程式、平方根、展開因数分解の計算を、分数・小数が混ざったものも含めて滞りなくできないと、数学の苦手からは脱却できません。計算力が自信のない人は、まずはこれらの単元の復習です。